もっと落ちついて熟考できたら、何かが引き出されたかも知れなかったが、そうして日常些事の方へ慰めを得ようとすると、これはまた、いま眼前にあった高邁なテーマに対してあまりに安易すぎ、彼は慰められる以上に汚されて、拒否したいくらいに思った、いかにも、みじめな人の世の幸福に浸ることは、潔癖な人間として、この上なく卑しむべき罪悪だというように。

燈台へ p.57 ヴァージニア・ウルフ

 タンズリーの、僕が的確なことを言うでしょう?僕がよい印象を与えるでしょう?という態度にかきまわされる、結局、トルストイについてより以上に、彼のことを知らされる、

燈台へ p.144 ヴァージニア・ウルフ

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安部 人間嫌いとは絶望してる奴なのだ。そんな奴が自分の絶望してることはひたかくしにして、人工衛星とか宇宙旅行とか騒いでいるんだ。おれも科学小説には興味があるし自分でも書いているが、絶望した人間嫌いから科学小説をとり返す必要があると思う。

安部公房全集 8 1957.12-1958.6 詩人には義務教育が必要である 安部公房・柾木恭介

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 人びとが包摂される相互依存関係は共有のものであるがゆえに、それが私的所有の対象とならないよう国家の監視下に置かれていく。国家はさまざまな規制をとおしてこの相互依存関係を維持し発展させることを主要な任務とするようになる。ここに福祉国家(welfare state)——しばしばそれは社会国家(social state)とも呼ばれる——が誕生する。

代表制民主主義はなぜ失敗したのか p41 民主主義国における社会の私物化 藤井達夫

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西洋では、なんでも二元論で切り分けようとする。情動と認識、主体と客体、人間と動物、生者と死者……。でも、チュツオーラの世界では、目にみえることとみえないことが分けられておらず、超自然的な存在と生きている人間との垣根もない。人間が植物になったり、神になったり、精霊になったり、半分男性で半分女性だったり、変幻自在に姿を変える。いろんな「存在」のあり方が可能な世界なのだ。

くらしのアナキズム p.198 自立と共生のメソッド 松村圭一郎

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たとえどんな激しい苦痛がもたらされるにせよ、おれはそれを知らなくてはならない。知ることによってのみ、人は強くなることができるのだから。

女のいない男たち ドライブマイカー 村上春樹

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 毎朝の書き写しをして快いのは、その日、あるいはその先の何週間、何ヶ月かの考え事が提供され続けることだ。読むだけでは通らない回路が頭に通り、生活に起きる様々がそれに触れてきて退屈しない。たまたま一つの考え事が一年間も持続すると、「オリジナルな霊気を生成させて」それにまつわる小説になるというのが、近年の自分のやり方である。

生活考察vol.8 オリジナルな霊気を訪ねて 乗代雄介

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