2025.10.07

 SNS上での藤井風に対する批判について、疑問を持ちつつもとくに言及していなかったのだが、先日、あまりよくない形での反論をXで見かけたので、ちゃんと文章に書いておこうと思いました。当該ポストはこちらです。藤井風への批判に反論するにとどまらず、サティヤ・サイ・ババ(以下サイババとします)への様々な批判を矮小化しています。とりわけ性虐待への言及部分に十分な注意が払われていない。一般に性加害は閉鎖性の高い状況で行われるため立証が難しい領域です。真偽が確定していないのであれば、別の論点を有利に進める材料としてもちだすべきではありません。それは被害当事者一般の萎縮や二次加害にもつながりえます。
 私自身はサイババへの批判は認められるべきと考えていますが、趣旨とずれるため、以下にいくつかの記事を貼っておきます。
 サイババの性加害についてはユネスコも懸念を表明し、2000 年にサティヤ・サイ教育研究所と共催予定だった会合から撤退したと記録されている。
 イギリス議会では早期動議による注意喚起が提出されている。
インド社会の中でもサイババに対する批判はある。
 一方で藤井風に対するSNS上への批判についても疑問があります。そもそも彼の宗教観は週刊誌によって暴露されたものであり、彼自身が特定宗教へのメンバーシップを公的に明言したこともないし、特定団体・儀礼への参加を明示的に促した事実もありません。ネット上ではいろいろな情報が流れていますが、一次情報は少なく、客観的に確認できるのは、アルバムタイトルで使用されている文章がサイババが用いた標語と一致、歌詞の中にサイババの教え(ハイヤーセルフなど)といった創作上の引用・参照にとどまるのではないでしょうか。藤井風自身もインド哲学からの影響をインタビューで認めています。参加の呼びかけ・誘因・入会/寄付への導線が確認できない現状では、これだけをもってステルス布教などといった批判はいき過ぎに思えます。
 もちろん、前述したサイババにまつわる批判と商業ポップスとしての公共性をふまえると、出典や注釈が明記されていれば受け手が自身で距離を測ることができ、安心できる設計だと思います。IIYY Projectという一部ファンがそれを求めている動きもあったそうです。現在は運動の中心となっていた方のSNSアカウント含め関連文書も削除されてしまっており、活動の全貌を知ることはかなわないが、どなたかスクショや魚拓などをもっていたら教えてほしい。